ホーム › このページで整理するもの: すでに作った設定を、次の一場面でどう使うか考えます。まだ土台がない場合は世界観の作り方、設定同士の食い違いを確かめる場合は世界観の矛盾チェックへ進めます。
コトハ
記憶を売る店の、創業年と瓶の等級と税制と店主組合の規約まで決めました。
ソウマ
すごい。でも、主人公が店に入る場面は?
コトハ
……まだ一行目です。
アキト
まず、その一場面で何を見せたい? そこから、今出す設定を選んでみよう。
Worldbuilding
設定倒れとは、作った設定を物語で活かせていない状態
設定倒れは、魅力的な設定を用意したものの、物語の中で十分に活かせていない状態を指す言葉です。カクヨムで公開された新井一樹さんの創作講義でも、練った設定をうまく活用できない例として使われています。「まだ本文を書き始められないこと」だけに限った言葉ではありません。
このページでは、そのうち設定ノートは増えたのに、本文で何を出すか決まらない場合を扱います。たとえば、店の歴史を説明するところで止まる、瓶の規格を全部書くか迷う、といった困り方です。設定の多さだけで原因を決めず、次に書きたい場面と、その場面を読者にどう読んでほしいかを確かめます。
「記憶を売る店」で主人公の迷いを見せたいなら、売ったときの代償が手掛かりになります。初めて店へ入る不思議さを味わってほしいなら、棚に並ぶ瓶の色や光も役に立ちます。同じ設定リストでも、書きたい場面によって出す部分は変わります。
世界観の土台そのものがまだ曖昧なら、先に 世界観の作り方 で必要な範囲を絞りましょう。ルールを作りすぎている場合は、物語のルール設定の作り方 に戻って「できること・代償・禁止・抜け道」に整理すると扱いやすくなります。
Rules of Place
設定を「今出す・資料に残す・後で判断する」に仕分ける
次に書く一場面を置き、設定ごとに「ここでは何のために使うか」を考えます。この記事では、整理のために次の3つを使います。
- 今の本文に出す:人物の行動や選択、読者の状況理解、場面の雰囲気に役立てたい部分。
- 資料に残す:作者が描写やルールをそろえるために持っておき、今は詳しく説明しない部分。
- 後で判断する候補として保留:今の役割は決めていないが、別の場面で使うかもしれない部分。
なくても筋が通る設定を、すべて外す必要はありません。 静かな日常や、不思議な店の空気を味わうことが場面の狙いなら、そのための描写を残せます。「必要か」だけで迷うときは、「読者に何を感じたり、理解したりしてほしいか」と書いてみてください。
この仕分けは、今の場面に対する仮の判断です。瓶の等級が色帯で分かる設定なら、帯の色を描写に出し、等級表の細目は資料に残すこともできます。一つの設定を丸ごと一箱へ入れなくてもかまいません。「後で判断する」は使用の約束ではなく、最後まで使わない場合もあります。
コトハ
削ると思うと悲しいですが、資料に残すなら少し楽です。
ミラ
本文に出さない設定も、作者の中では世界を支えています。
ソウマ
読者に全部見せなくても、書き手が持っていればいいんだな。
Scene Filter
記憶を売る店の設定を、仕分け表から本文の一文へ移す
ここからは、仕分け方を示す架空の作例です。まず作者のノートに、次の設定があるとします。
- S1:記憶を売ると、その記憶の相手の顔を思い出せなくなる。
- S2:記憶の瓶には等級があり、色帯で見分ける。等級表は別紙にある。
- S3:記憶の裏市場がある。主人公が関わるかは未定。
次に書くのは、主人公が母との記憶を売るか迷う店内の場面です。作者は「母の顔を失うと知って、主人公が手を止める姿」を見せたいと考えています。売る理由や値段は、この短い作例では未設定です。必要になったら別途考えます。
| 元の設定 | 今の扱い | 作者がそう判断した理由 |
|---|---|---|
| S1:相手の顔を思い出せなくなる | 本文に出す | 母の記憶を売るか迷う理由を、読者が理解できるようにする |
| S2:瓶の等級と色帯 | 等級表は資料へ。色帯の描写は必要なら出す | 細かな分類をそろえておく。店内の雰囲気を描く場合は色を使える |
| S3:裏市場。関与は未定 | 後で判断する候補として保留 | この場面での役割は未定。別の場面で必要を感じたら見直す |
作者がS1を使い、契約書と手を止める動作を本文として書き足すなら、たとえばこうなります。
母の顔を思い出せなくなる、と契約書に書かれていた。主人公は差し出されたペンに触れたまま、動けなかった。
契約書やペンは、この一文を書くときに作者が加えた描写です。元のノートから見つかった設定ではありません。瓶の等級表は資料に、裏市場は保留のまま残ります。雰囲気も描きたいなら色帯の一文を足せますが、この例では迷いを先に書きました。
AIに相談するときは、設定リストと場面の狙いを渡す
AIには、すでにある設定と、今書きたい場面を示します。外部へ入力してよい資料かは自分で確かめ、渡せないものは手元で仕分けます。
もったいない相談例
この世界観に設定をもっと足してください。
よい相談例
既存の設定リスト:__________
次に書く場面:__________
この場面で読者に伝えたいこと:__________
設定ごとに、元の記述を短く引用し、「今の本文に出す部分」「資料に残す部分」「後で判断する候補」を理由付きで提案してください。
人物の行動だけでなく、読者の理解や場面の雰囲気に果たす役割も見てください。一つの設定を部分ごとに分けてもかまいません。
新しい設定や将来の展開は作らず、判断に必要な情報がなければ「保留」と確認したい点を示してください。
Practice
設定仕分けシートに、使う部分と試す一文を残す
次の場面と設定リストを置き、今出す部分、資料に残す部分、後で判断する候補を分けます。本文に使うものには、行動・理解・雰囲気のどこへ役立てたいかを書きましょう。該当する設定がない分類は空欄でかまいません。
書けそうなら、使う部分を一つ選んで一文を試します。まだ場面や役割を決められないときは、無理に分類を確定せず「次に何を確かめるか」を残せば、続きを考えやすくなります。
実践ワーク
設定仕分けシートを1枚にまとめる
設定の使う部分と残す部分を分け、場面での役割を記録します。最後は試す一文、または次に確かめたいことを残せます。
仕分けても本文が動かないときは
仕分けは、今出す情報を考えるための方法です。それだけで本文が進むとは限りません。止まる場所が変わったかを見て、次に扱うことを選びます。
- 最初に何を書くか浮かばない:ストーリーの作り方 の問いから、人物や最初の出来事を考えてみる
- 出したい設定同士が食い違って見える:世界観の矛盾をチェックする方法 で、同じ時点・条件の記述か確かめる
- 分類の基準が揺れる:場面の狙いや読ませ方を一つ仮に置き、別の狙いなら判断がどう変わるか比べる
- 設定づくり自体を楽しみたい:今日はノートを作る日にしてもよい。本文へ戻りたくなったとき、この仕分けを使う
今日できたもの
- この記事で作ったもの
- 本文・資料・保留に分けた設定仕分けシート
- 次に育てる場所
- 「本文に出す」に残した設定を使う、止まっていた場面の原稿
- 次の行動
- 使う設定で一文を試す。未定なら、場面や役割について次に確かめたいことを残す
ソウマ
瓶の等級表は資料、裏市場は保留。今回は母の顔を失うと知るところから書くんだな。
コトハ
はい。瓶の色を見せたい場面になったら、ノートをまた開きます。
アキト
それでいい。まず一文を試して、今の場面に合うか読んでみよう。
おつかれさまでした
設定仕分けシートを残せた!
今使う部分と、資料や保留に残す部分を分けました。本文を試してから分類を変えてもかまいません。設定同士の食い違いが気になる場合は、次の記事で確かめられます。
チェックすると、マイノートに読んだ記録が残ります。
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