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一人称と三人称、どっちを選べばいいのか毎回迷うんだ。書きやすさで選んでいいのかな。
コトハ
書きやすさも大事です。同じ人物へ寄る二案を試して、必要な情報を書けるか比べてみましょう。
ミラ
人称を替えることと、内面を追う人物を替えることは、分けて考えると整理しやすいです。
Scene
一人称と三人称の違いを、語る人と情報の範囲で考える
一人称は、物語に関わる語り手が「私」「僕」などを使って語る形式です。三人称は、人物を「蓮」「彼」などと呼んで語ります。ただし、三人称にすれば、登場人物全員の心を自動的に書けるわけではありません。
三人称でも、一人の知覚や内面を主に追う「三人称限定」と、複数人物の内面や広い事情を扱う「三人称全知」では、使う情報の範囲が違います。基本的な区別はOpenStaxの語りの視点の解説でも確認できます。
| 形式 | 語り方の例 | 扱う内面 | この練習で決めること |
|---|---|---|---|
| 一人称 | 私は手を伸ばせなかった | 語り手自身の内面。相手については観察・推測・聞いたことを区別 | 誰が、いつの時点から語るか |
| 三人称限定 | 蓮は手を伸ばせなかった | この場面で寄る人物の内面 | 誰に寄り、どの情報を使うか |
| 三人称全知(神視点) | 蓮の事情と紗季の事情を語る | 複数人物の内面や人物が知らない事情も扱える | 語り手が何を、どの順に知らせるか |
まずは、次の三つを分けて考えましょう。
- 誰が語るか:蓮自身が「私」と語るのか、蓮を三人称で語るのか。
- 誰の知覚や内面に寄るか:蓮のためらいを追うのか、紗季が待つ側の気持ちを追うのか。
- いつから語るか:その場で分かることだけを書くのか、後で知った事情も含む回想にするのか。
「一人称は近い、三人称は遠い」とだけ覚えると、二つ目と三つ目を見落とします。三人称限定でも内面へ近づけますし、一人称でも、時間を置いて自分の行動を振り返れます。OpenLearnの解説には、大人になった語り手が子どもの頃の出来事を語る例があります。
Show, Not Tell
一人称と三人称限定を、同じ傘の場面で書き比べる
ここからは、高校生の蓮と紗季を使った自作の練習例です。サイトの案内役たちとは別の人物です。三案に共通する設定を先に置きます。
- 放課後、雨の降る校門の屋根の下に二人がいる。
- 紗季が、予備の閉じた傘を蓮へ貸そうとしている。
- 蓮は、また物を借りるのが申し訳なくて手を出せない。
- 紗季は駅へ急ぎたい。差し出した腕が疲れ、手を少し下げる。
- 二人はまだ、その理由を言葉にして伝えていない。後日の知識も本文へ入れない。
A:蓮が語る一人称
紗季が、閉じた傘の持ち手を差し出した。
私はまた借りるのが申し訳なくて、手を伸ばせなかった。
紗季の手が少し下がった。
B:蓮に寄る三人称限定
紗季が、閉じた傘の持ち手を差し出した。
蓮はまた借りるのが申し訳なくて、手を伸ばせなかった。
紗季の手が少し下がった。
AとBで変えたのは、二文目の「私」を「蓮」と呼ぶ語り方です。紗季の手が下がる動作は、どちらにも書けます。蓮が見える動作だからです。この短い例では、読者に渡した事実や内面の情報は同じです。
C:紗季に寄る三人称限定
紗季は、閉じた傘の持ち手を蓮に差し出した。
急いで駅へ行きたいのに、蓮は手を伸ばさない。
腕が疲れ、紗季は傘を持つ手を少し下げた。
BからCでは、人称を変えずに、内面を追う人物を蓮から紗季へ替えました。急ぐ気持ちと腕の疲れが分かる一方、蓮がためらう理由は、この三文だけでは分かりません。
| 情報 | A:蓮の一人称 | B:蓮に寄る三人称 | C:紗季に寄る三人称 |
|---|---|---|---|
| 紗季の手が下がる | 見える動作として書く | 見える動作として書く | 自分の動作として書く |
| 蓮が手を出せない理由 | 自分の内面として書く | 寄る人物の内面として書く | この三文では分からない |
| 紗季が急ぐ気持ちと腕の疲れ | この三文では分からない | この三文では分からない | 寄る人物の内面・感覚として書く |
観察、推測、後で聞いたことを区別する
蓮に寄る案で「紗季は怒っていた」と言い切るなら、その情報をどこから得たか確かめます。手が下がったことだけでは、怒りか疲れかは決まりません。
- 観察:「紗季の手が少し下がった。」
- 蓮の推測を足す別案:「怒らせたのかもしれない、と私は思った。」
- 後日から語る別案:「翌日、紗季から、あのときは腕が疲れただけだと聞いた。」
最後の案は語る時点を変えています。A〜Cへ黙って混ぜず、回想として書くと決めた場合に試します。相手の気持ちを一人称で述べる文が、すべて誤りになるわけではありません。
作品では、形式名だけでなく本文を読む
夏目漱石の『吾輩は猫である』の冒頭では、猫が当時の感覚を語りながら、後で聞いた人間についての知識も添えています。ここからは、体験した時点と語る時点を分けて読む練習ができます。
芥川龍之介の『羅生門』では、下人の迷いが描かれる一方、語り手が説明を補い、下人が去った後の老婆の動作も描かれます。この記事では、全編を一人に固定した三人称限定の見本としては扱いません。「この段落は誰の内面を示すか」「人物が見ていない情報を誰が語るか」を、本文に沿って確かめる例として読んでください。
ソウマ
相手の手が下がるところは、一人称でも見えるんだな。違うのは、その理由まで分かるかどうかか。
アキト
今回のAとBでは情報は同じだ。Cは寄る人物を替えたから、分かる内面が変わった。
AI Partner
AIには、二案の視点と情報源を照合してもらう
AIで比べる場合も、まず本文と比較条件を渡します。「一人称と三人称、どちらがよいか」だけでは、人物や出来事まで変更された案が返ることがあります。
同じ人物へ寄る二案なら、共通の出来事と語る時点をそろえます。寄る人物も変える場合は、その変更を明記してください。出力では、原文にある情報とAIが推測した情報を分けて確認します。
もったいない相談例
この話にいちばん合う視点を選んで、本文も完成させてください。よい相談例
場面と、比べる本文の版:__________
語る時点(当時/後からの回想など):__________
二案で変えない出来事・人物の設定:__________
案Aの語り方・寄る人物・本文:__________
案Bの語り方・寄る人物・本文:__________
比べたい情報や迷っている箇所:__________
二案を文ごとに読み、①観察・自分の内面・推測・伝聞・語り手の説明のどれか、②本文にある情報源、③相手の内面を根拠なく断定していないか、を整理してください。
人称を変えた差と、寄る人物・出来事・語る時点を変えた差を分けてください。
指定された回想や全知の条件は維持し、不明な情報源は「要確認」としてください。
新しい事情や本文を作らず、採用視点を決めず、原文の該当箇所を添えて比較だけ返してください。AIが相手の動作をすべて「一人称では書けない」としたら、見聞きできる動作かを原文に戻って確かめます。逆に、相手の内面を「三人称だから書ける」としたら、限定か全知か、誰に寄る条件かを見直します。
Practice
視点比較表に、二案の本文と採用・保留の理由を残す
比較表には、同じ場面の二案と、二案で変えない事実を残します。人称だけを変えた比較なのか、寄る人物も替えた比較なのかが分かるように書いてください。
実践ワーク
二案の本文と、情報源を比較表に残す
語る時点と共通の事実をそろえ、二案の本文、観察・推測・伝聞の根拠、採用または保留の理由を保存します。次に試す場面も一つ残しましょう。
一つの場面で決めきれなければ、採用欄は空欄でも、保留の理由を書いても構いません。隠したい情報がない場面なら、その欄も無理に埋める必要はありません。
一場面の比較を、作品全体へ広げる前に
今回のAとBは、同じ人物の内面に寄り、同じ情報を渡せる例でした。語り口の好みだけでなく、次の場面でも必要な情報を扱えるか試してから、作品全体の方式を考えます。
- 一人称で後の知識を使いたい:いつから振り返って語るかと、その情報を知った経緯を決める。
- 複数人物の内面を追いたい:三人称全知にするか、章や場面ごとに寄る人物を替えるかを比べる。
- 語り口も比べたい:小説の地の文の書き方で、同じ情報をどの言葉で渡すか試す。
- 切り替わりを示したい:場面転換の書き方で、時間・場所・視点が変わる目印を選ぶ。
- 長い作品へ広げたい:長編プロットの作り方で、節目と次に書く区間を整理し、誰から語るかもメモする。
今日できたもの
- この記事で作ったもの
- 二案の本文・共通条件・情報源を残した視点比較表
- 確かめること
- 人称を変えた差と、寄る人物や語る時点を変えた差
- 次の行動
- 採用または保留の理由を残し、次の一場面で試す
ソウマ
AとBなら、紗季の動作も蓮のためらいも残せる。次は語り口を変えて読んでみたい。
コトハ
情報が同じだと確かめてからなら、言葉の調子も比べやすいですね。
アキト
次の場面で相手の事情が必要なら、どの情報源を使うかも決めておけ。
おつかれさまでした
条件をそろえて、二案の視点を比べられた!
人称、寄る人物、語る時点を分け、二案の本文と情報源を比較しました。採用または保留の理由を残し、次の一場面でも必要な情報を扱えるか試しましょう。
チェックすると、マイノートに読んだ記録が残ります。
小さな物語
この記事とつながる小さな物語
物語の種を捨てずに残すことを、コトハたちの短い場面として読めます。 記事の理解に必須ではありません。少し余韻を見たいときだけ開いてください。

レンを悪役化しすぎず、ソウマ側の受け取りに視点を置いています。
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