シーンにする

物語の視点を決める基本

一人称と三人称の違い

一人称と三人称は、語る人、内面を追う人物、語る時点を分けて考える。同じ場面の条件をそろえ、観察・推測・伝聞の根拠を比べる。

この記事の結論

一人称と三人称を選ぶときは、誰が語るか、誰の内面を追うか、いつの時点から語るかを分けます。同じ場面の条件をそろえて書き、読者に渡せる情報を比べてみましょう。 読み終えると「視点比較表」を自分で形にするための判断手順まで確認できます。

ミラ ソウマ アキト コトハ
難易度
初心者
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最終更新日

この記事でわかること

  • 一人称と三人称の違いを場面で比べられる
  • 観察・推測・後で聞いた情報を分けられる
  • 読者が知る情報・知らない情報を整理できる
#視点#一人称#三人称

ソウマ

一人称と三人称、どっちを選べばいいのか毎回迷うんだ。書きやすさで選んでいいのかな。

コトハ

書きやすさも大事です。同じ人物へ寄る二案を試して、必要な情報を書けるか比べてみましょう。

ミラ

人称を替えることと、内面を追う人物を替えることは、分けて考えると整理しやすいです。

01

Scene

一人称と三人称の違いを、語る人と情報の範囲で考える

一人称、三人称限定、三人称全知の違いを、語り手と内面・情報の範囲で整理する。誰が語るか、誰に寄るか、後日の回想を含むかを別々に決める。

一人称は、物語に関わる語り手が「私」「僕」などを使って語る形式です。三人称は、人物を「蓮」「彼」などと呼んで語ります。ただし、三人称にすれば、登場人物全員の心を自動的に書けるわけではありません。

三人称でも、一人の知覚や内面を主に追う「三人称限定」と、複数人物の内面や広い事情を扱う「三人称全知」では、使う情報の範囲が違います。基本的な区別はOpenStaxの語りの視点の解説でも確認できます。

形式語り方の例扱う内面この練習で決めること
一人称私は手を伸ばせなかった語り手自身の内面。相手については観察・推測・聞いたことを区別誰が、いつの時点から語るか
三人称限定蓮は手を伸ばせなかったこの場面で寄る人物の内面誰に寄り、どの情報を使うか
三人称全知(神視点)蓮の事情と紗季の事情を語る複数人物の内面や人物が知らない事情も扱える語り手が何を、どの順に知らせるか

まずは、次の三つを分けて考えましょう。

  1. 誰が語るか:蓮自身が「私」と語るのか、蓮を三人称で語るのか。
  2. 誰の知覚や内面に寄るか:蓮のためらいを追うのか、紗季が待つ側の気持ちを追うのか。
  3. いつから語るか:その場で分かることだけを書くのか、後で知った事情も含む回想にするのか。

「一人称は近い、三人称は遠い」とだけ覚えると、二つ目と三つ目を見落とします。三人称限定でも内面へ近づけますし、一人称でも、時間を置いて自分の行動を振り返れます。OpenLearnの解説には、大人になった語り手が子どもの頃の出来事を語る例があります。

02

Show, Not Tell

一人称と三人称限定を、同じ傘の場面で書き比べる

蓮の一人称Aと蓮に寄る三人称限定Bは、同じ動作と内面を示せる。紗季に寄るCでは急ぐ気持ちと腕の疲れが加わる。相手の動作の観察と心情の推測、後日の伝聞を区別する。

ここからは、高校生の蓮と紗季を使った自作の練習例です。サイトの案内役たちとは別の人物です。三案に共通する設定を先に置きます。

  • 放課後、雨の降る校門の屋根の下に二人がいる。
  • 紗季が、予備の閉じた傘を蓮へ貸そうとしている。
  • 蓮は、また物を借りるのが申し訳なくて手を出せない。
  • 紗季は駅へ急ぎたい。差し出した腕が疲れ、手を少し下げる。
  • 二人はまだ、その理由を言葉にして伝えていない。後日の知識も本文へ入れない。

A:蓮が語る一人称

紗季が、閉じた傘の持ち手を差し出した。

私はまた借りるのが申し訳なくて、手を伸ばせなかった。

紗季の手が少し下がった。

B:蓮に寄る三人称限定

紗季が、閉じた傘の持ち手を差し出した。

蓮はまた借りるのが申し訳なくて、手を伸ばせなかった。

紗季の手が少し下がった。

AとBで変えたのは、二文目の「私」を「蓮」と呼ぶ語り方です。紗季の手が下がる動作は、どちらにも書けます。蓮が見える動作だからです。この短い例では、読者に渡した事実や内面の情報は同じです。

C:紗季に寄る三人称限定

紗季は、閉じた傘の持ち手を蓮に差し出した。

急いで駅へ行きたいのに、蓮は手を伸ばさない。

腕が疲れ、紗季は傘を持つ手を少し下げた。

BからCでは、人称を変えずに、内面を追う人物を蓮から紗季へ替えました。急ぐ気持ちと腕の疲れが分かる一方、蓮がためらう理由は、この三文だけでは分かりません。

情報A:蓮の一人称B:蓮に寄る三人称C:紗季に寄る三人称
紗季の手が下がる見える動作として書く見える動作として書く自分の動作として書く
蓮が手を出せない理由自分の内面として書く寄る人物の内面として書くこの三文では分からない
紗季が急ぐ気持ちと腕の疲れこの三文では分からないこの三文では分からない寄る人物の内面・感覚として書く

観察、推測、後で聞いたことを区別する

蓮に寄る案で「紗季は怒っていた」と言い切るなら、その情報をどこから得たか確かめます。手が下がったことだけでは、怒りか疲れかは決まりません。

  • 観察:「紗季の手が少し下がった。」
  • 蓮の推測を足す別案:「怒らせたのかもしれない、と私は思った。」
  • 後日から語る別案:「翌日、紗季から、あのときは腕が疲れただけだと聞いた。」

最後の案は語る時点を変えています。A〜Cへ黙って混ぜず、回想として書くと決めた場合に試します。相手の気持ちを一人称で述べる文が、すべて誤りになるわけではありません。

作品では、形式名だけでなく本文を読む

夏目漱石の『吾輩は猫である』の冒頭では、猫が当時の感覚を語りながら、後で聞いた人間についての知識も添えています。ここからは、体験した時点と語る時点を分けて読む練習ができます。

芥川龍之介の『羅生門』では、下人の迷いが描かれる一方、語り手が説明を補い、下人が去った後の老婆の動作も描かれます。この記事では、全編を一人に固定した三人称限定の見本としては扱いません。「この段落は誰の内面を示すか」「人物が見ていない情報を誰が語るか」を、本文に沿って確かめる例として読んでください。

ソウマ

相手の手が下がるところは、一人称でも見えるんだな。違うのは、その理由まで分かるかどうかか。

アキト

今回のAとBでは情報は同じだ。Cは寄る人物を替えたから、分かる内面が変わった。

03

AI Partner

AIには、二案の視点と情報源を照合してもらう

AIには場面と版、語る時点、共通事実、案Aと案Bの条件・本文、比較したい点を渡す。観察・推測・伝聞の根拠を照合し、設定を追加せず未確認を保留する。

AIで比べる場合も、まず本文と比較条件を渡します。「一人称と三人称、どちらがよいか」だけでは、人物や出来事まで変更された案が返ることがあります。

同じ人物へ寄る二案なら、共通の出来事と語る時点をそろえます。寄る人物も変える場合は、その変更を明記してください。出力では、原文にある情報とAIが推測した情報を分けて確認します。

もったいない相談例

この話にいちばん合う視点を選んで、本文も完成させてください。

よい相談例

場面と、比べる本文の版:__________ 語る時点(当時/後からの回想など):__________ 二案で変えない出来事・人物の設定:__________ 案Aの語り方・寄る人物・本文:__________ 案Bの語り方・寄る人物・本文:__________ 比べたい情報や迷っている箇所:__________ 二案を文ごとに読み、①観察・自分の内面・推測・伝聞・語り手の説明のどれか、②本文にある情報源、③相手の内面を根拠なく断定していないか、を整理してください。 人称を変えた差と、寄る人物・出来事・語る時点を変えた差を分けてください。 指定された回想や全知の条件は維持し、不明な情報源は「要確認」としてください。 新しい事情や本文を作らず、採用視点を決めず、原文の該当箇所を添えて比較だけ返してください。

AIが相手の動作をすべて「一人称では書けない」としたら、見聞きできる動作かを原文に戻って確かめます。逆に、相手の内面を「三人称だから書ける」としたら、限定か全知か、誰に寄る条件かを見直します。

04

Practice

視点比較表に、二案の本文と採用・保留の理由を残す

視点比較表へ二案の本文、語る時点、固定事実、情報源、採用または保留の理由を保存する。隠す情報は必須にせず、次の場面でも必要な情報を扱えるか試す。

比較表には、同じ場面の二案と、二案で変えない事実を残します。人称だけを変えた比較なのか、寄る人物も替えた比較なのかが分かるように書いてください。

実践ワーク

二案の本文と、情報源を比較表に残す

語る時点と共通の事実をそろえ、二案の本文、観察・推測・伝聞の根拠、採用または保留の理由を保存します。次に試す場面も一つ残しましょう。

条件

人称・寄る人物・語る時点を分け、比較で変えるものを明記する。

根拠

観察・推測・伝聞・語り手の説明を区別し、情報源を確かめる。

比較

二案の本文を残し、採用または保留の理由と次に試す場面を書く。

生成される実践メモ

入力すると、この記事のワーク結果がノートに貼れる形でここにまとまります。
物語のあらすじ・練習の範囲: ____ 主要シーン: ____ 案A:語り方・寄る人物・本文: ____ 案B:語り方・寄る人物・本文: ____ 採用または保留の理由(空欄でも可): ____ 読者へまだ渡さない情報(なければ空欄): ____ 語る時点と情報の条件: ____ 二案で変えない出来事・設定: ____ 観察・推測・伝聞と、根拠の確認: ____ 次に比べる場面・保留事項: ____

全部埋めなくて大丈夫。1行だけでも保存できます。

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一つの場面で決めきれなければ、採用欄は空欄でも、保留の理由を書いても構いません。隠したい情報がない場面なら、その欄も無理に埋める必要はありません。

一場面の比較を、作品全体へ広げる前に

今回のAとBは、同じ人物の内面に寄り、同じ情報を渡せる例でした。語り口の好みだけでなく、次の場面でも必要な情報を扱えるか試してから、作品全体の方式を考えます。

  • 一人称で後の知識を使いたい:いつから振り返って語るかと、その情報を知った経緯を決める。
  • 複数人物の内面を追いたい:三人称全知にするか、章や場面ごとに寄る人物を替えるかを比べる。
  • 語り口も比べたい:小説の地の文の書き方で、同じ情報をどの言葉で渡すか試す。
  • 切り替わりを示したい:場面転換の書き方で、時間・場所・視点が変わる目印を選ぶ。
  • 長い作品へ広げたい:長編プロットの作り方で、節目と次に書く区間を整理し、誰から語るかもメモする。

今日できたもの

この記事で作ったもの
二案の本文・共通条件・情報源を残した視点比較表
確かめること
人称を変えた差と、寄る人物や語る時点を変えた差
次の行動
採用または保留の理由を残し、次の一場面で試す

ソウマ

AとBなら、紗季の動作も蓮のためらいも残せる。次は語り口を変えて読んでみたい。

コトハ

情報が同じだと確かめてからなら、言葉の調子も比べやすいですね。

アキト

次の場面で相手の事情が必要なら、どの情報源を使うかも決めておけ。

おつかれさまでした

条件をそろえて、二案の視点を比べられた!

人称、寄る人物、語る時点を分け、二案の本文と情報源を比較しました。採用または保留の理由を残し、次の一場面でも必要な情報を扱えるか試しましょう。

チェックすると、マイノートに読んだ記録が残ります。

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