裏本編 / 雨の日の郵便屋 編

二通目の宛先

落選後の二作目を考える裏本編。ソウマが次の物語を誰に届けたいのかを探し、書く理由を見つけ直す。

Story Focus

読者像を、広い市場ではなく届けたい相手として狭められるか。

二作目読者像テーマ
この話の気づき
宛先を狭めると、テーマは説明ではなく届けたい相手への姿勢として立ち上がる
最後の選択
『返事がなくても、まだ待っている人へ』と書き、差出人に自分の名前を置く
次の問い
宛先が決まった原稿に、最初の読者はどう触れるのか

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物語のアイデア出し 物語のアイデアが浮かばないときの出し方|日常からネタを作る5つの発想法 次に何を書くかを、宛先から考える流れを描いています。 物語のテーマの作り方 物語のテーマとは?初心者でも見つけられる中心の考え方 返事がなくても待っている人へ届ける、というテーマの芯を作っています。 感情からテーマを決める 感情から物語のテーマを決める方法|怒り・後悔を種にする 落選後の痛みを、次の読者像と物語の方向へ変えています。

「二作目って、誰に出せばいいんだろう」

ソウマがそう言うと、ミラはすぐにタブレットを開いた。

「投稿サイト候補を出します」

「いや、そういう宛先じゃなくて」

「公募、投稿サイト、文芸誌、身内回覧」

「身内回覧って言い方、急に会社」

コトハが笑い、アキトはノートを一枚めくった。

「読者の話か」

ソウマはうなずいた。

落選通知への返事として書き始めた「次の一通」は、まだ数行しかない。

雨の日の郵便屋が、届かなかった手紙を拾いに行く。

そこまでは書けた。

でも、その手紙を誰に届けるのかが分からない。

選考委員に向けて書くのか。

レンに向けて書くのか。

昔の自分に向けて書くのか。

それとも、まだ顔も知らない読者に向けて書くのか。

宛先を決めないまま書くと、またどこかで安全な道に逃げそうだった。

「受かりたい人に向けて書くと、受かりそうな話になる」

ソウマは言った。

「レンに向けて書くと、レンに分かってもらう話になる」

アキトがうなずく。

「悪くはない」

「でも、今回はそれだけじゃない気がする」

コトハが、机の真ん中に白い封筒を置いた。

「宛先を書いてみませんか」

「誰の?」

「まだ分からない相手の」

ソウマは封筒を見た。

差出人も宛先もない。

白い封筒は、白いページより少しだけやさしく見えた。

ソウマはペンを持つ。

そこで、手が止まった。

宛先を書こうとしているのに、差出人の欄も空いていることに気づいた。

「差出人、いる?」

ソウマが聞くと、アキトが短く答えた。

「いる」

「物語なのに?」

「物語だから」

その一言で、封筒が急に重くなった。

誰に届けるかだけではなく、誰が届けるのか。

そこを空欄にしたままなら、また自分の名前だけを安全な場所に隠せてしまう。

最初に書きそうになったのは、「昔の自分へ」だった。

でも、そこで止まった。

昔の自分だけに届けるなら、また過去の傷の中で完結してしまう。

次に浮かんだのは、「落ちた人へ」だった。

広すぎる。

急にポスターみたいになる。

ミラが言った。

「条件を狭めます。今、いちばん返事を待っている人は誰?」

ソウマはしばらく考えた。

そして、封筒に書いた。

「返事がなくても、まだ待っている人へ」

書いた瞬間、胸の奥が少し動いた。

それは選考委員でも、レンでも、昔の自分だけでもない。

でも、全員に少しずつ届く気がした。

コトハが封筒を見て、静かにうなずいた。

「二通目の宛先ですね」

ソウマは照れくさくなって、ペンのキャップを閉めた。

「重くない?」

アキトが言う。

「軽い宛先に逃げるよりいい」

ミラが封筒の横に付箋を貼る。

「二作目の目的: 返事がなくても待っている人へ届ける」

ソウマは、空いていた差出人の欄にも小さく書いた。

「ソウマ」

たった三文字なのに、宛先を書くより少し怖かった。

でも、怖いからこそ消さなかった。

ソウマはその付箋を見た。

まだ物語は始まっていない。

でも、どこへ向かうかは少し見えた。

宛先のない手紙は迷子になる。

宛先が決まった手紙は、まだ遠くても歩き出せる。

読後メモ

この話では、落選後の二作目で「何を書くか」より先に「誰に届けたいか」を決めています。

読者像を決めると、物語のテーマや場面の選び方がぶれにくくなります。大事なのは「みんな」ではなく、今その物語を届けたい一人まで宛先を狭めることです。

自分の原稿でも、白い封筒を一枚置くつもりで宛先を書いてみてください。誰に届けるかだけでなく、差出人に主人公自身の名前を書けるかまで考えると、書く理由が場面の中に立ち上がります。

前の 次の一通 から読むと、落選後の一行が二作目の宛先へ変わる流れが分かります。次は コトハの読めない感想 で、読む側の怖さを扱います。

関連する記事は 物語のアイデアを出す方法物語のテーマの作り方 です。

この話の気づき

宛先を狭めると、テーマは説明ではなく届けたい相手への姿勢として立ち上がる次の問い: 宛先が決まった原稿に、最初の読者はどう触れるのか

読み終えたら記録できます。次に読むおすすめが未読の話へ移ります。

二通目の宛先

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