裏本編 / 雨の日の郵便屋 編

雨の日の落選通知

小説コンテストの落選を描く裏本編。ソウマが平気なふりをやめ、悔しさと怒りを言葉にする。

Story Focus

落選の痛みを、原因分析の前にそのまま場面へ置けるか。

落選感情の谷振り返り
この話の気づき
落選後の振り返りは、原因分析の前に痛みを一語で置くところから始められる
最後の選択
ノートに『くやしい。』と書き、その下に雨の日への怒りを残す
次の問い
この痛みを消さずに、ソウマは次の物語の宛先を見つけられるのか

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結果発表の日は、雨だった。

それだけで、ソウマは少し腹が立った。

物語みたいに整いすぎている。雨の日の郵便屋を書いた自分に、わざわざ雨の日に結果を返してくるなんて、世界の演出が雑だと思った。

アトリエの窓に雨粒が当たっている。

ミラが結果ページを開いた。

「確認しますか」

ソウマはうなずいた。

本当は、自分で押すつもりだった。

でも指が動かない。

コトハが隣に立ち、アキトは少し離れた席で腕を組んでいた。

受賞作一覧。

佳作。

選外作品への個別通知はありません。

タイトルの一覧に、「雨の日の郵便屋」はなかった。

ミラが小さく言う。

「ありません」

それだけだった。

落ちた、という文字すらない。

名前がないだけで終わるのだと分かった瞬間、ソウマは自分の物語が誰にも届かなかったような気がした。

ソウマは画面を見たまま、笑おうとした。

「まあ、そうだよな」

声が軽すぎて、自分でも嫌になった。

「初投稿で受かるほど甘くないし。変な話だし。まあ、いい経験」

コトハは何も言わなかった。

ミラもタブレットを閉じない。

アキトが低く言う。

「平気か」

「平気」

返事は早かった。

早すぎた。

アキトはもう一度聞いた。

「悔しくないのか」

その瞬間、ソウマの中で何かが切れた。

「悔しいに決まってるだろ」

声が大きくなった。

自分でも驚いた。

「悔しいよ。腹立つよ。なんでないんだよって思うし、何がだめだったのか分からないし、分からないのがまた腹立つ。出さなきゃよかったって、今ちょっと思ってる」

言葉が止まらなかった。

「でも、出さなかったら出さなかったで、また逃げたって思うんだろ。どっちにしても嫌だ。なんだよ、それ」

雨の音が強くなる。

ソウマは机の端を握った。

泣きたくない。

怒りたい。

でも、怒っているうちに目の奥が熱くなる。

コトハが、そっとティッシュを置いた。

何も言わない。

慰められたら、たぶん耐えられなかった。

ミラが結果ページを閉じ、創作ノートを開いた。

受付番号の付箋は、まだそこに貼ってある。

消えていない。

受賞作一覧に名前はない。

それでも、出した事実はなくならない。

それが今は、少し腹立たしかった。

なくなってくれたほうが、楽だった。

アキトが言った。

「悔しいなら、書け」

ソウマはにらんだ。

「今?」

「今。分析じゃない。感情のまま」

ミラがページの上に日付を書いた。

「落選通知の日」

ソウマはペンを持った。

手が震えている。

最初の一行に、きれいな言葉は出てこなかった。

「くやしい。」

ひらがなで書いた。

子どもみたいだと思った。

でも、それ以上の正確な言葉がなかった。

次に書いた。

「雨の日に落ちるな。」

ミラが小さく吹き出した。

コトハも、泣きそうな顔で少し笑った。

ソウマも、涙が出る前に笑ってしまった。

落選通知は痛い。

痛いまま、ページの上に置かれている。

でも、書いた瞬間、それはただの終わりではなくなった。

次に何かを書くための、ひどく不格好な一行になった。

読後メモ

この話では、落選の悲しみ、怒り、悔しさを隠さず描いています。

落選は「いい経験」で片づけるには痛い出来事です。主人公が平気なふりをやめ、感情をそのまま書くことで、読者にも強い谷が生まれます。

自分の原稿で落選や失敗を書くなら、反省や原因分析を急がせず、まず一語だけ感情を置いてみてください。「くやしい」「腹が立つ」「なかったことにしたい」のような整っていない言葉が、次の場面へ進む足場になります。

前の ミラの変な褒め方 から読むと、称賛で支えられたあとに結果の痛みが来るため、感情の落差が大きくなります。次は 次の一通 で、落選後の小さな再起へ進みます。

関連する記事は 投稿する不安との向き合い方作品を書いた後の振り返り方 です。

この話の気づき

落選後の振り返りは、原因分析の前に痛みを一語で置くところから始められる次の問い: この痛みを消さずに、ソウマは次の物語の宛先を見つけられるのか

読み終えたら記録できます。次に読むおすすめが未読の話へ移ります。

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